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ジョン・B・ワトソンは何した人か 行動主義の心理学や実験について

ワトソンの心理学

ジョン・ブローダス・ワトソン(John Broadus Watson)は心理学の分野で「行動主義」を提唱し、大きな変革をもたらした人物です。では、ワトソンは一体何をした人なのでしょうか?

彼は、人間の行動を科学的に分析し、内面的な意識ではなく、観察可能な行動に焦点を当てた研究で知られています。

特に有名なのが「アルバート坊やの実験」で、これは恐怖反応が条件付けによって学習されることを示したものです。また、ワトソンは「氏より育ち」という言葉でも知られ、人間の発達において環境の影響が大きいとする「環境優位説」を強く主張しました。

本記事では、ワトソンの功績や行動主義の影響について詳しく解説していきます。

この記事を読めば理解できること
  • ワトソンが行動主義心理学を提唱した背景と内容
  • アルバート坊やの実験と恐怖条件付けの意義
  • ワトソンの「氏よりも育ち」という環境優位説の考え方
  • 行動主義心理学が現代の心理学や教育に与えた影響
目次

ジョン・ブローダス・ワトソンは何をした人か

ジョン・ブローダス・ワトソン(John Broadus Watson)は、20世紀初頭に「行動主義心理学」を提唱し、心理学の分野に大きな変革をもたらした人物です。

それまでの心理学は、内観や意識の研究が主流でしたが、ワトソンはこれに異を唱え、心理学を観察可能な行動に焦点を当てるべきだと主張しました。彼は、刺激と反応の関係を通じて、人間の行動を科学的に理解し、コントロールできると考えたのです。

ワトソンの功績の一つとして、1913年のコロンビア大学での講演「行動主義者から見た心理学」が挙げられます。この講演は、行動主義心理学の宣言とも言えるもので、心理学の対象を客観的に観察可能な行動に限定するという考えを広めました。また、彼の研究はイワン・パブロフの条件反射理論にも影響を受けており、これに基づいて「古典的条件付け」の概念を発展させました。

具体的な例として、「アルバート坊やの実験」が有名です。この実験では、白いネズミに対して恐怖反応を条件付け、アルバートという幼児が他の類似した物体にも恐怖を感じるようになったことを示しました。この実験を通して、情動や恐怖のような複雑な反応も学習される可能性があることを証明しました。

一方で、ワトソンの考えは批判も受けました。彼は人間の行動は遺伝よりも環境の影響が大きいと主張し、適切な環境があれば、どんな人間にも育てることができると過激な発言をしたためです。これにより、彼の理論は一部で極端と見なされ、論争の的になりました。

最終的にワトソンは、不倫スキャンダルをきっかけに学界を離れ、広告業界に転身しましたが、彼の行動主義心理学は、その後も多くの心理学者に影響を与え続けました。

ワトソンの心理学のおけるポイント

ワトソンの行動主義心理学

ジョン・ブローダス・ワトソンの行動主義心理学とは、人間の心理を「行動」に基づいて科学的に分析する心理学の一派です。従来の心理学は、意識や内観といった目に見えない心の動きを重視していましたが、ワトソンはそれを排除し、客観的に観察できる行動に焦点を当てました。これにより、心理学をより自然科学に近いものにすることを目指しました。

ワトソンは、心理学の目的は「行動の予測とコントロール」であると考えました。そのため、行動を引き起こす要因である刺激(S)と、それに対する反応(R)の関係を中心に研究を進めました。この「刺激―反応(S-R)」の結びつきが行動の基礎であり、これを通じて人間の行動は説明可能であるとしました。ワトソンの理論は、心理学において客観的で実証的な手法を導入する重要な役割を果たし、その影響は現代の心理療法や教育理論にも広がっています。

一方で、ワトソンの行動主義は、刺激と反応の関係を重視するあまり、人間の内的な思考や感情を無視しすぎるという批判もありました。その後、この点を改善するために、新行動主義などの理論が発展していきました。

「氏よりも育ち」環境優位説

ワトソンが提唱した「氏よりも育ち」環境優位説は、人間の発達や性格形成において、遺伝よりも環境が大きな影響を与えるという考え方です。彼は、人間の行動や性格は、適切な環境と経験によって形成されると主張し、極端な例として「健康な1ダースの赤ちゃんがいれば、どんな職業の人間にも育て上げられる」と述べています。この発言は、環境の力を強調するワトソンの信念を象徴しています。

この考え方は、特に教育や子育てにおいて大きな影響を与えました。ワトソンは、子供は生まれながらにして特定の性格や能力を持つわけではなく、親や周囲の環境によって学習されると考えました。これにより、教育や訓練によって、子供の成長をコントロールできるという期待が広がったのです。

しかし、この環境優位説にはデメリットも存在します。人間の行動をすべて環境の影響に帰すことは、遺伝的要因や個々の個性を軽視することになり、現実的ではないという批判もあります。また、ワトソンの理論はあまりに機械的で、感情や精神的な側面を無視しすぎているとも言われています。これらの批判にもかかわらず、ワトソンの環境優位説は、心理学や教育分野に大きな影響を与え続けています。

アルバート坊やの実験と「恐怖条件付け」

アルバート坊やの実験は、ワトソンが行った有名な「恐怖条件付け」の実験であり、行動主義の具体例としてよく取り上げられます。この実験では、生後11か月のアルバート坊やに、恐怖の感情が学習によって条件づけられるかを調べました。アルバート坊やが白いネズミを見ているときに、背後で大きな音を鳴らすことで、彼に恐怖反応を引き起こさせるという方法を取りました。

実験の結果、アルバート坊やは白いネズミだけでなく、ウサギや毛皮のコートなど、似たようなもの全般に恐怖を抱くようになりました。これが「般化」と呼ばれる現象で、条件づけられた恐怖が他の似た対象にも広がることを示しています。この実験は、人間の恐怖や不安が学習によって引き起こされることを証明するものとして、心理学に大きなインパクトを与えました。

しかし、この実験は倫理的な問題が指摘されています。幼い子供を対象に、恐怖を与えるような条件づけを行うことは、現在の倫理基準では許されない手法です。実験後のアルバート坊やの精神的なケアについては明確な記録がなく、この点も非難の対象となっています。それでも、この実験が示した「恐怖は学習される」という考えは、後の行動療法や恐怖症の治療に応用されています。

ワトソンの心理学まとめ

  • ジョン・ブローダス・ワトソンは行動主義心理学の創始者
  • 心理学を内観ではなく観察可能な行動に焦点を当てた
  • パブロフの条件反射理論を基に古典的条件付けを発展させた
  • アルバート坊やの実験で恐怖が学習されることを証明した
  • 環境優位説を提唱し、遺伝よりも環境が人間を形成すると考えた
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